フィリピン|第二マグサイサイ橋・バイパス道路建設事業|海外の土木・建設プロジェクト

東南アジア

ミンダナオ島の発展に向けて新橋とバイパス道路を建設

経済開発に不可欠な道路整備

フィリピンにおいて道路網は最大の輸送手段であり、旅客輸送の約9割、貨物輸送の約5割を道路網が担っている。本事業の対象地ミンダナオ島は、同国の中でも経済水準が低く、貧困緩和の面からも道路網整備による地域開発が強く求められていた。

同島北東部のブトゥアン~カガヤンデオロ~イリガン道路は、島内および近隣地域との物流に極めて重要な役割を果たしており、島内の経済社会開発の根幹を担っている。他方、同島北東部の中心都市であるブトゥアン市の中心部を流れるアグサン川に架かる橋梁は1957年に建設されたもので、交通量が多く渋滞が激しいこともあって老朽化が進んでおり、抜本的な対策が求められてきた。

渡河手段のなかった地点に新橋を建設

そのような状況を背景に、2000年8月に始まった本事業では、ブトゥアン~カガヤンデオロ~イリガン道路上にアグサン川を渡る新しい橋として「第二マグサイサイ橋」と、同橋を通るバイパス道路を建設した。既存の橋梁は通行規制により15t以上の車両が通行できなかったため、代替ルートとしてバイパス道路を確保する必要があったのである。第二マグサイサイ橋は同国では初めての「鋼斜張橋」であり、橋梁延長は往復2車線で360m、アプローチ橋は鋼製鈑桁で橋長548mである。バイパス道路は同じく往復2車線で総延長9,430m。東は日比友好道路につながる幹線道路に、西はブトゥアン空港に連結している。

ブトゥアン市内の自動車登録台数は、2001年の1万213台から11年には2万1,720台と2倍以上に増えている。本事業は2007年5月にバイパス道路が完成後、補修・補強を実施した既存橋と併せて交通の効率的な渋滞緩和に大きく寄与している。

度重なる設計変更

詳細設計時は北京オリンピック前で鋼材需給が逼迫し、鋼材単価は月ごとに上昇とするという異常な状況にあった。工事費についてはF/S時に決定しており、極力、予算内で抑えることがフィリピン政府より求められた。その設計対策案として両サイドのアプローチ橋の1スパンの削減、軟弱地盤対策工の変更などを実施して工事費の高騰に対応した。また工事においては、フィリピンでの鋼管矢板基礎の初施工、対候性鋼材の大型橋梁案件への初採用、高強度コンクリート(45N/㎟)での製作など、日本の持つ高い技術力をいかんなく発揮した。こうして数々の困難を乗り越え、本事業は予定より1カ月遅れはしたが無事、完成に漕ぎつけたのである。

輸送の大動脈となった第二マグサイサイ橋

通行所要時間が大幅に減少

事業完成から6年後、本事業に対して外部評価が実施された。交通量は計画値の8割程度に達しており、既存橋周辺やブトゥアン市内ではバイパス道路ができたことで渋滞が軽減され、通行所要時間も大幅に減ったことが確認されている。地元住民や運送業者を対象としたアンケート調査でも満足度は極めて高かった。

夜間照明に浮かぶ橋面

フィリピン政府は「カラガ地域(ミンダナオ島北東部地方)開発計画(2011-16)」の中で、優先すべき事業として既存の運輸インフラの維持管理・リハビリに加えて、本事業のフェーズ2(本事業対象区間から日比友好道路に接続する区間)を挙げている。地域の戦略的発展を見据えながら、同国の道路建設は今後も続く。

地域のランドマークとなる美しいデザイン

コンサルティング:(株)片平エンジニアリング・インターナショナル(株)綜合技術コンサルタントほか

『国際開発ジャーナル2020年4月号』掲載

(本内容は、取材当時の情報です)

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