首都の発展支える斜張橋
ベトナムの首都ハノイの遷都1000周年を記念して建設されたニャッタン橋は、紅河によって分断された同市北部に位置するノイバイ国際空港と市の中心部をつなぐ橋梁の一つだ。一連の橋梁に6つの支間を有する世界的にも珍しい6径間連続鋼桁の斜張橋であり、橋長は3,080m、主塔の高さは108.56mと、東南アジアの中で最大級の規模を誇る。
さらに、同市が誇る世界遺産(文化遺産)のタンロン遺跡を取り囲むように建っていた5つの門にちなんで建設されたA字型の5つの主塔の基礎には、日本で開発された鋼管矢板基礎工法が採用されており、ハノイの歴史と日越友好のシンボルとして定着している。
この斜張橋建設工事は、船舶の交通に配慮するなど、さまざまな条件の下での短工期の建設工事となったため、建設経験の少ないベトナムでは非常に難易度の高い工事となった。用地の取得が遅れたことにより、3年を予定していた工期が5年に伸びたが、IHIインフラシステムの松野憲司プロジェクトマネージャーは、「いいものをつくりたいという信念の下、事故を起こすことなく質の高い工事を進め、伸びた工期を4カ月短縮することができた」と語る。こうした努力によってニャッタン橋は2015年1月に開通。交通渋滞が深刻化していた空港から市内への所要時間は約20分短縮された。
なお、ニャッタン橋の施工技術とデザイン、またベトナムの経済および社会への貢献は高く評価され、土木学会平成26年度田中賞(作品部門)や2015年度日本鋼構造協会(JSSC)協会賞、第11回JICA理事長表彰など多数の賞を受賞している。
コンサルティング:(株)長大/大日本コンサルタント(株)
施工:(株)IHIインフラシステム/三井住友建設(株)
『国際開発ジャーナル2016年7月号』掲載
(本内容は、取材当時の情報です)
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