パキスタン|パンジャブ州における道路アセットマネジメントシステム能力向上プロジェクト

道路・橋梁の予防保全の仕組みづくりを支援

「教える」のではなく主体的な担い手として自立を促す

パンジャブ州は、パキスタン最大の人口である約1億1,000万人を有する州で、同州が管理する道路の総延長は8万7,700kmに及ぶと言われている。旅客輸送の90%、貨物輸送の95%が道路に依存するパキスタンにおいて、道路の果たす役割は非常に大きいが、技術者の人材・技術力不足やシステムの未整備など維持管理能力は低い。州政府の要請に基づき、国際協力機構(JICA)の技術協力プロジェクトが実施された。カウンターパートはパンジャブ州の公共事業局(C&W)で、本プロジェクトは36カ月の期間を予定している。

私は副業務主任として2022年11月の事業開始当初から参加した。従来は事後対応であった道路・橋梁の維持管理を予防保全型に改め、点検データの収集とその分析、分析結果に基づいた優先順位付けと予算の確保、さらに補修・補強の実施という4つのステップで維持管理を進める体制の構築を目指した。

こうした維持管理体制は、日本ではすでに確立されているが、それを単純にパンジャブ州に持ち込むことが任務ではない。カウンターパート自らが考え、自国に最適なシステムを構築し、維持管理に関するPDCAを自立的に運用できるようにすることこそ、プロジェクトが目指すゴールであった。単なる技術の受け渡しではなく、最適解を導くプロセスそのものを、信頼関係を築きながら共に模索して確立することが求められた。国内では出会えない多様なバックグラウンドを持つ人々との共同作業を通して互いを理解し、自らも刺激を受け視野を広げながら成長できるところに、海外業務の醍醐味があると感じている。

プロジェクトギャラリー

定期的にJVメンバーと打ち上げを行い、親睦を深めている

パキスタンの技術士会が主催の舗装維持管理セミナーでプロジェクトを紹介する筆者

橋梁維持管理に関するテクニカルワーキンググループ(TWG)にて維持管理の方針・体制について議論

道路橋梁維持管理研修で講義する筆者

プロジェクト担当者

パシフィックコンサルタンツ株式会社 グローバルカンパニー 国際インフラ開発部 道路・橋梁室


武藤 信太郎さん(むとう・しんたろう)

工学研究科社会基盤工学修了後、2006年に同社へ入社。約10年間、国内橋梁設計を手がけ、その後、世界を舞台にエンジニアとして挑戦したいという想いから国際部門へ異動。現在は当プロジェクトと並行してパラオやケニアなど、さまざまな国で橋梁に携わる仕事に従事。

※国際開発ジャーナル2025年6月号掲載

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