デジタル技術を「楽しむ」ことで学びあう
小規模製造業の現場で自作可能なデジタルカイゼンを支援
南アフリカは近年、製造業全体においてカイゼンの知識・技術を普及させ、品質・生産性を向上しようとしている。その中でも特に、小規模製造業でも安価に導入可能なデジタルカイゼンの技術移転を本専門家が担当している。
情報通信技術(ICT)、特にソフトウェアはお金が無くても知識があれば始められる技術であり、途上国の発展にはとても相性が良い。専門家というと、長年積み上げた経験やノウハウを教えているイメージがあるが、ICT分野では毎日のように新しい技術が現れ、数年前の情報もすぐに陳腐化するため、教える方も毎日のように新しい技術を学び続ける必要がある。本プロジェクトでは、2,000円ほどで買えるマイクロコンピュータと数百円ほどの安価なセンサーを使った製造現場のデータ駆動カイゼンの方法などを教えている。教える側も講義直前までインターネット上の最新情報で学びながら教材を更新し、学ぶ側のカイゼン支援者や工場担当者も「動いた!」「動かない
~」と声が飛び交う電子工作教室のような雰囲気で楽しく(かつ実用になる)技術移転をするように心掛けている。
現場の情報を取得するシステムでは予想もしなかった問題が生じる。粉末状の原料を扱う工場に設置したセンサーは、人の目では見えない微量の粉末が空気中に漂っているだけでもエラーを起こす。そのような問題をどう回避し、低予算でシステムを作り上げるか。一緒に考えながら進めていくことは苦労であると同時に楽しく、またそうあるべきだと考える。彼らの中から、専門家と同じように、新しいデジタル技術を学び楽しみながら業務のカイゼンを教えられる者が出て、学びあいの裾野が広がっていくことを期待したい。
プロジェクトギャラリー

驚くほど小さくて安いが強力なマイコンとセンサー

プラスチック成型機の不具合を検知するシステム

ジュース工場で生産量管理を行うシステム

ビジュアルプログラミングの画面

工場 の片隅に設置した自作ダッシュボード

センサーシステムの設置法を説明する専門家
プロジェクト担当者
株式会社日本開発サービス
小暮 陽一さん(こぐれ・よういち)
企業研究者から青年海外協力隊を経て国際協力の道に入る。これまでJICAが実施したICT分野の33のプロジェクト・調査に参加し、合計120を超える教材作成を始め29年間一貫して発展途上国向けの技術協力業務に携わってきた。2025年、日本ITU協会奨励賞を受賞。
※国際開発ジャーナル2025年7月号掲載