マラウイ|道路整備事業に向けた災害リスクに対する脆弱性評価

日本ならではの防災の知見を世界銀行事業に生かす

災害リスク分析踏まえた強靭な道路整備を

マラウイはアフリカ南東部に位置し、日本の約3分の1の国土に人口約2,041万人(2022年世銀)を擁する。国際貧困ラインである1日1.9ドル以下で暮らす人口の割合は71.0%(2022年)と世界の最貧国の1つだ(JICA「国別分析ペーパー」)。近年では立て続けに洪水に見舞われ、南部、シレ川沿いの主要道路である国道1号および周辺道路で落橋や道路寸断の被害が多発した。

世界銀行による同地域の道路整備事業で、当社は2024年、水理解析による整備レベルの検討や構造強化のための整備コストの算出、その実現可能性検討などのアドバイザリーを受託。より適切な整備計画策定にあたり、区間内の全ての橋梁を対象とした災害リスク評価が必要であった。

同評価では、精度と迅速性の両方が求められた。道路延長は計約200km、交差する河川は44と、解析対象の水域は広大だった。水文観測データも限られ、半年の検討期間では精度の高い水理解析は不可能だった。そこで、衛星画像を基に過去の雲の状況などから降雨量を推計するオープンデータを活用し、20年、50年、100年確率の降雨強度ごとに各支川で想定される流量を算出。河積が不足する橋梁を抽出し、流量に応じた優先順位付けを行った。

従来、世銀の融資案件では、道路整備の計画段階で災害リスクに対する脆弱性評価を精緻に実施することはあまりない。本業務では、橋梁などの脆弱性評価を構造物レベルで実施した点で画期的な取り組みだったといえる。精度を担保しながら、複数の専門分野を横断し、答えを出す日本のコンサルティングサービスの品質は、世銀担当者にも高く評価されている。この強みを途上国のインフラ整備に生かすことは、日本ならではの国際貢献だろう。

プロジェクトギャラリー

マラウイ現地大学でのセミナー後の集合写真

普段は水量が少なく枯川であり場合もあり増水時のみ洪水となる。日本とは洪水の様子も大きく異なる

洪水レベルの測量

プロジェクト担当者

パシフィックコンサルタンツ株式会社


伊藤 拓也さん(いとう・たくや)

2014年入社。2015年4月より東北大学災害科学国際研究所に出向。2017年4月以降現職にて、途上国での防災・復興まちづくりに係る国際協力機構(JICA)技術協力プロジェクトや世界銀行調査業務に従事。

※国際開発ジャーナル2025年7月号掲載

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