難民受入地域での行政官の能力向上
地域社会の安定と災害への備え:二つのレジリエンスの強化に向けて
ウガンダには隣国の南スーダンやコンゴ民主共和国から多くの難民が流入している。プロジェクト対象の西ナイル地域12県の中には、地元住民人口の2倍以上の難民を受け入れている県もある。各県とも、従来から教育・保健・給水などの社会サービスの提供が不十分である。加えて、難民や
地続きの隣国住民もこれらを利用するため、サービス提供に一層の負荷が発生している。また、各県は、財源が乏しい中、頻発する自然災害への対応も求められている。
そこで、本プロジェクトでは、地方行政官を対象に、地元住民と難民両方の社会サービスへのニーズが各県の開発計画に反映され、また社会的弱者が取り残されることがない防災・減災事業が実施されることを目指し、2021年からプロジェクトを実施している。現在、難民などの影響をデータで示す、つまり「見える化」が進み、地元と難民のニーズが客観的に比較・整理され、開発計画に反映されつつある。また行政官の社会的弱者への認識が変わり、支援されるだけではなく災害への備えに貢献できる人々として、彼らも含めたコミュニティ全体で災害への備えに取り組んでいる。
プロジェクト活動の際、専門家チームは、カウンターパート(CP)の考えや思いに耳を傾けて、それを適宜、反映している。なぜならこれを通じて、彼らがプロジェクトの成果や教訓を「自分事」として捉え、活用してほしいと考えているためである。
難民と地元住民の双方が必要な社会サービスを利用でき、行政官と住民、住民同士の繋がりが強化され、そして脆弱な立場の人々を含めた住民同士で共助する。本プロジェクトで支援した行政官達を通じて、このようなレジリエントな社会が広がっていくことを強く願っている。
プロジェクトギャラリー
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地域ワークショップでハンドブックの概要を説明 する(馬淵氏)
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パイロット事業実施に向けて、 CPの考えを聞く(長根尾氏)
プロジェクト担当者
株式会社片平エンジニアリング・インターナショナル
開発業務本部 課長 馬淵 ゆき子さん(まぶち・ゆきこ、右)
国際関係学修士、青年海外協力隊員(ケニア)、JICAコンゴ民事務所企画調査員を経てKEI入社。平和構築、地方開発計画策定支援等に従事。
開発業務本部 課長代理 長根尾 和子さん(ながねお・かずこ、左)
国際学修士、日本評価学会認定評価士。青年海外協力隊員(マラウイ)を経てKEI入社。平和構築、社会調査等に従事。
※国際開発ジャーナル2025年8月号掲載