安全を築き、信頼を得た立体交差づくり
交通の混乱を越えて、安全意識と安心を届けたプロジェクト
ウガンダの首都カンパラでは、急速な都市化に伴い交通渋滞が深刻化していた。特に空港と市内を結ぶ幹線道路では、車、バイク、歩行者だけでなく動物も雑然と行き交い、交通ルールも形骸化していた。整備の遅れた交通環境は、事故と混乱を日常化させており、早急な対応が求められていた。
この状況を打開するべく始動したのが「カンパラ立体交差建設・道路改良事業」である。現地の交通渋滞のボトルネックとされてきたクロックタワー周辺において立体交差高架橋、鋼製歩道橋、地下道の建設、また、幹線道路の近代化に着手した。
私にとってこれが初のアフリカ案件であり、不安を抱えながら現地に入った。そこで待ち受けていたのは、秩序が保たれない交差点と、複雑な交通事情だった。
工事では既存交通を止めずに施工を進める「切り回し」が大きな課題となった。バイクが車の隙間を縫って逆走し、交通誘導もままならない。さらに、現地作業員は安全に対する意識が極めて低く、日本人なら誰もが「危険」と思うようなことも彼らにとっては「危険」と認識されないでいた。そこで、朝礼や写真を使った啓発、警察との連携による誘導強化、現地スタッフへの技術指導など、粘り強い対策を重ねた。
次第に、何人かの若者が技術や仕事への責任感・安全意識を身につけ、現場のリーダーとして育っていった。その成長する背中には確かな誇りとともに次の現場でも力を発揮したいという想いが宿っているように見えた。
完成後、交差点周辺を歩くと住民から「ありがとう」と声をかけられることがあった。生活に密着したインフラだからこそ得られた感謝の声は、これまでと異なる実感として心に刻まれた。
プロジェクトギャラリー

朝礼で安全意識を徹底

清掃活動で環境美化にも貢献

バリケード設置中

バリケード設置完了
プロジェクト担当者
清水建設株式会社
土木国際支店 土木生産計画部 主査 大島 知幸さん(おおしま・ともゆき)
1996年に土木工学科を卒業後、同業他社を経て2015年に清水建設へ入社。現場責任者として、海外、主に東南アジアや南アジアの橋梁建設や大型港湾建設など数々のインフラ案件を統括。技術提案から施工管理まで一貫して担い、地域の交通・物流改善に貢献。
※国際開発ジャーナル2025年8月号掲載