自立した治山事業実施主体者を目指して
インド北部山岳地帯における治山事業
インド北部のウッタラカンド州で実施されている治山事業における円借款事業において、インド森林局(以下、C/P)が治山技術を用いた山地災害対策を理解し、適切に実施、管理できる体制を構築できるよう、本技術協力プロジェクトが行われた。
治山工事に関する調査、計画、設計、図面作成、積算、そして施工管理に至るまでの一連の流れをC/Pと一緒になって実施し、その活動を通じて技術移転を図った。
急傾斜地や渓流地において、「治山」を目的とした適切な対策工を選定するために、災害のメカニズム、対策工の目的を理解させるとことを重視した。
持続性の観点からインドで従来から使われている工法を中心としつつ、日本の法枠(のりわく)
工、ダブルウォールダムといった技術も積極的に採用した。
最も苦労したのは、施工の工程管理だ。施工業者が「資金がない」「重機や作業員の手配ができない」などを理由に工程を守らないことが何度もあった。そこは施主であるC/Pに対して、期日を守らないとどういうことが起きるのか、将来的な流れを説明しながら理解してもらい、C/Pから施工業者に指導してもらうことに努めた。
技術支援のプロジェクトは既に終了したが、対策工事は現在もC/P自身により進められている。今後もC/Pがインドの山を守る仕事を継続してくれることを切に祈っている。
我々は「人」を相手に仕事をしている。私が政府開発援助(ODA)事業で常に意識していることは、「より良い解決策をC/Pと一緒に見つけ、C/Pと一緒に仕事をする」ということだ。これからも相手国のために、一緒に働いている仲間たちのためにODA事業に携わっていきたい。
プロジェクトギャラリー

ダブルウォールダムの施工

ダブルウォールダムの施工

CPたちと現場調査終わりに
プロジェクト担当者
国際航業株式会社
事業統括本部 海外コンサルティング部 都市開発グループ 佐藤 秀男さん(さとう・ひでお)
1995年に国際航業㈱に入社、日本国内の下水道・道路設計に約15年携わり、その後約15年間、海外の部署で廃棄物管理分野の他、道路防災、インフラ整備・改善などのODA事業に従事。
※国際開発ジャーナル2025年9月号掲載