ベトナム|紅河橋建設事業(パッケージ3A)|海外の土木・建設プロジェクト

東南アジア

急速な経済成長を遂げる首都の基幹道路を整備
日本企業の高度な技術力で予定通りに竣工

紅河橋建設事業は99年に最初のE/N(交換公文)が締結された。経済成長に伴う急速なモータリゼーションによって、深刻な国家的課題となっていた首都ハノイの交通渋滞を緩和することが事業の目的である。

ハノイ市の「環状3号線」は全長76kmの、極めて重要な機能を持つ幹線道路である。ハノイ空港と都心を結ぶほかに、都心から四方に伸びる幹線道路を連結する役割を果たしている。

当時未整備であった、この環状3号線の南の部分約13.5kmの道路を、拡張・舗装・高架化するというのがこの事業の主眼である。市内を縦断する紅河を環状3号線が渡河する地点に橋長3,000m強のタインチ橋(=紅河橋)がパッケージ1で建設された。2007年に完成したこのタインチ橋は、現在では日越友好のシンボルとなっている。

施工中全景

この事業は全体で6つのパッケージに分けられた。今回紹介するパッケージ3Aのプロジェクトは工事延長2.5km、道路を拡幅した上で、144本の橋脚などで道路そのものをすべて高架化する、というのがプロジェクトの内容である。ランプ橋229m、側道2,091mの建設工事も含まれている。

国道1号線上の箱桁

施工段階では様々な課題に直面しました、と現地の工事責任者であった三井住友建設の執行役員、田原一光氏は話す。その様々な問題のうち、①土地収用の遅れ、②国道1号線と国有鉄道の直上での施工、③工期厳守のための急速施工の実施、の3点にだけ簡単に触れておきたい。

①土地収用と障害物撤去の遅れは、ベトナムで工事を行う際の最大の問題点であるという。今回も、工事開始の時点で工区に53軒の民家が存在していた。担当者を決め、人民委員会などの関係部署に日参し、民家の住民と友好関係を維持しながら工事を進める、これらが功を奏して、着工してから13カ月後に全民家の移転が完了した。異例の速さであると現地の関係者は驚いていたという。

脚頭部の支保工型枠 

②国道1号線と国有鉄道をまたぐ部分の高架道路(箱桁:延長約50m)の建設は、落下物が絶対に許されないことや障害物が多数埋設されていたことから、困難を極めた難工事になった。落下物を防ぐため大きな防護壁を設置し、その壁面にJV名と「富士と桜」「ホアン・キエム湖と蓮」という両国を代表する図柄を掲示し(写真2参照)、通行車両へ安全を喚起したため、各方面から好評を博し、工事は無事に完了した。

国道1号線上の箱桁

③このパッケージでは、施主から2010年10月1日に始まるハノイ市「遷都千年祭」までに工事を終えるよう強く要請されていた。そのため、工事用進入路の拡張、作業ヤードの変更、工法の変更、人員の増強、作業時間の延長、など様々な方法で工程を短縮する急速施工を実施した。その際、危惧される事故を防止するために日本人の安全責任者を1年間常駐させ、また、「Speed, Beauty with Safety」のスローガンを現場に貼り出し(写真6)、作業の安全確保と共に、施工速度の向上、現場の整理整頓とを全員に周知徹底させた。

現場に貼り出されたスローガン

このような努力が実を結び、遷都千年祭の前日に、工事は無事完了した。田原氏は、「毎日のように地元職員へ叱咤激励の教育を行い、かつ協力業者、施主、コンサルが渾然一体となっての努力の成果で、工期が達成できた」という。

同社の急速施工は、現地のテレビ、ラジオ、新聞、雑誌などで報道され、多くの関係者が現場の見学に訪れた。同氏はまた、「ODAは資金融資のハード面だけでなく、日本の高度な建設技術と管理手法をODA供与国に我々建設会社が示して、その監理精神を伝えるべきものと考える」とも述べている。

横桁工

コンサルティング:(株)オリエンタルコンサルタンツ
施工:三井住友建設(株)

『国際開発ジャーナル2011年3月号』掲載

(本内容は、取材当時の情報です)

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