ブラジル|サンパウロ州沿岸部衛生改善事業|海外の土木・建設プロジェクト

中南米

日本にゆかりのある地域の上下水道を整備し、生活環境を改善

経済成長と観光開発

ブラジル国のサンパウロ州は人口3,700万人と全人口の22%が居住し、年間GDPは約4,000億レアル(約15兆円)で同国全体のGDPの33%に達していた(2001年)。いずれも群を抜いて同国最大の規模であり、州都サンパウロは国家経済の中心地となっている。

サントス下水処理場の施工風景

同州のサントス市を中心とする9市で構成される大西洋沿岸部はバイシャーダ・サンチスタと呼ばれ、近年同州の中でも経済成長が最も著しい地域である。この地域にはブラジル最大の貿易港サントス港があり、同国有数の工業地帯やサントス沖のプレソルト層下油田などもある。こうした拠点の開発による経済発展でバイシャーダ・サンチスタの人口は近年著しく増加していた。

海中放流管の敷設工事

一方、この地域には総延長162kmの海岸線に82のビーチがあり、大サンパウロ都市圏に最も近い行楽地として開発されてきた。近年、サンパウロ市とこの地域を結ぶ高速自動車道の車線増加により、週末や連休の時期には内陸部からの観光客が押し寄せるようになっていた。その結果、この地域の海岸部および河川の水質汚染が急速に進行し、上下水道施設の整備が急務となっていた。

ペルイーベ市に新設された下水処理場 同様の施設がバイシャーダ・サンチスタの9カ所に建設された

微生物の活動を活発にして下水を浄化する エアレーションタンク(曝気槽)

長期的な友好関係の礎として

本円借款事業では、バイシャーダ・サンチスタの9市において、安定的な下水道サービスの提供と生活環境の改善、自然環境保全を目的として、下水処理場、海中放流管、下水道幹線管渠、ポンプ場などの下水道施設の建設が主に行われた(別表参照)。浄水場・ポンプ場の建設、導水管・配水管の敷設などの上水道整備も同時に行われ、2011年にはすべての施設の運転が開始されている。プロジェクトの事後評価では、家庭内の衛生状態だけでなく生活全般が改善されたとして受益者から高い評価が示された。

推進工法による下水幹線管渠(かんきょ)の埋設工事

海中放流管の接合作業

一方、本事業は、ブラジルの経済成長のアキレス腱ともいえる水系の環境汚染に対して下水道・下水処理施設などの整備の支援を行うことで、日本がブラジルとの戦略パートナーシップを築く上でも重要な協力となっている。

侠雑物除去装置

下水処理監視制御システムのモニター

サントス港は、1908年にブラジルへの日本人集団移住者を乗せた第1回移民船「笠戸丸」が到着したところである。この地域には、戦前から日系人のコミュニティも存在し、伝統的に日本との結びつきが強い。サントス市の海浜公園には、日本移民ブラジル上陸記念碑やブラジルに帰化した著名な造形作家の大竹富江さんが制作した日本移民百周年の赤い記念モニュメントが立つ。本事業の実施機関、サンパウロ州上下水道公社(サントス支所)には、本事業を詳しく紹介する展示コーナーが設置され、積極的に広報している。

下水処理場のエアレーション(曝気)前の流入設備

事業の内容

寄稿:中央開発(株)海外事業部 部長 山口 達朗氏

コンサルティング:中央開発(株)

『国際開発ジャーナル2019年11月号』掲載

(本内容は、取材当時の情報です)

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