パラオ|パラオ国無収水削減能力向上プロジェクト

水道管の水量の可視化で収益改善

持続性と作業の効率化を見据えた能力開発

パラオでは、現在でも第二次世界大戦中に敷設された水道システムが利用されているが、漏水、水道メーターの不感、計測誤差などにより料金徴収のできない無収水率が高い。これが、水道事業を担当する公共事業公社(PPUC)の営業収入の低迷につながっていた。2018年には一部の送配水管路が日本の援助で更新されたものの、PPUC職員の無収水対策への管理能力が不足していたため、無収水率の削減、水道事業収益の改善には至らなかった。

本案件では、無収水対策に関する技術協力を行い、PPUCの能力向上と収益改善を目指した。しかし、職員によるデータの読み取りや記録ミスが発生しており、正確なデータを活用するための対策が講じられていなかった。そこで無収水の実態を全職員が理解できるような体制をつくろうと、データや情報の「見える化」に注力した。維持管理に必要なデータを共有サーバーに移行し、簡単にアクセスできる環境を整えた。また、ビジネスインテリジェンス(BI)ツールを活用することで、使用水量や配水量などのデータをグラフ化し、PCやスマートフォンから常に確認できるようにした。職員への指導も行い、漏水探知方法や漏水管の修理方法、水道メーターの精度試験などへの助言も行った。これらの取り組みによって、データの利活用が進み、無収水率の改善が確認されるようになった。

作業環境の整備や、職員の実践的理解の促進など、苦労した点もあったが、現地の職員と共に考えて事実を納得してもらい、持続可能な取り組みにすることを心掛けて活動した。今後、PPUCが自力で無収水率を改善し、事業収益が向上することを期待する。

プロジェクトギャラリー

PPUC職員によるプロジェクトの説明

漏水実験指導

水道メーターの精度試験指導

プロジェクト担当者

八千代エンジニヤリング株式会社
新村 宏樹さん(にいむら・ひろき)

文系の大学を卒業後、漏水調査/機材メーカーの海外事業部にて世界の漏水調査会社との交流を深め、スリランカやエジプトの無収水関連案件に従事。さらに、世界各国での無収水削減の専門家として活動するため、八千代エンジニヤリングに入社し、現在も南アフリカやチュニジアの無収水関連案件で活躍している。

※国際開発ジャーナル2025年4月号掲載

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