汚水管理改善に向けた円滑な合意形成に寄与
ラムサール条約登録湿地の保全にも期待
ポカラ市は2021年時点で51万人の人口を擁し、2050年には約85万人まで拡大する見込みのあるネパール第2の都市だ。同市は年間100万人が訪れる観光都市でもあり、特にPhewa湖を含む湖群は重要な観光資源である。しかし、不完全な下水道整備や汚水管理の不備による水質汚染が懸念されている。ネパール政府は汚水管理に関する目標を掲げているが、既存の下水道整備計画が進展しておらず、早急な汚水管理対策が求められていた。
本プロジェクトでは、下水道整備、関連する法令整備、腐敗槽の管理、雑排水の処理など、ポカラ市の汚水管理マスタープランと水環境監視計画の策定を支援し、給水省(MoWS)/上下水道管理局(DWSSM)および同市の能力向上を目指した。
同市では既存の汚水管理事業体制が確立しておらず、都市全体の包括的衛生(CWIS)を念頭においた施設建設や汚水管理事業の実施体制計画をゼロから立案する困難さに直面した。そこで、日本側専門家チームはカトマンズとポカラの2拠点事務所を整備し、両拠点で日本人専門家がイニシアチブをとって、情報共有とネパール国内機関の円滑な合意形成を実現させた。この活動は、DWSSMおよび同市の担当者間のコミュニケーションチャンネルの実現に寄与した。
プロジェクト終了後は、ポカラ市の持続的な汚水管理体制確立のための技術協力プロジェクトの実施、観光税(仮称)による財源確保や水質モニタリング、ラムサール条約登録湿地の保全、ビル&メリンダ・ゲイツ財団(BMGF)との連携による腐敗槽管理台帳システム(IMIS)構築を期待している。今後は、し尿処理施設の建設や下水道の段階整備も視野に入れている。
プロジェクトギャラリー
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ネパール国内研修(下水処理場視察)
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Hemja下水処理場予定地(Seti川右岸)

ポカラ市の技術者や事務職員を対象に、水質測定方法や機器の構成方法について技術移転を行った

環境保全対象のPhewa湖及び汚水管理対象のポカラ市内
プロジェクト担当者
八千代エンジニヤリング株式会社
五十嵐 英幸さん(いがらし・ひでゆき)
大学院を卒業後、八千代エンジニヤリングに入社し、国内事業部で主に上下水道や構造物の設計に従事した。その後、海外事業部に配属され、上下水道・環境施設の調査、計画、設計、施工監理および技術協力の業務を実施。現在は、南アジア、東南アジア、大洋州をはじめ各国で活躍している。
※国際開発ジャーナル2025年5月号掲載