ミャンマー|マグウェイ総合病院整備計画|海外の土木・建設プロジェクト

東南アジア

産婦人科、乳幼児関連の病床を倍増
清潔な手術室も備えた中核病院へ

産婦人科などの新棟を建設

ミャンマーには7つの地域と7つの州があり、それぞれに州・地域総合病院が置かれている。これらの病院は地方医療の中核的役割を担い、多くの患者を受け入れるだけでなく、医師や看護師などの人材育成にも携わる。

基礎工事

当計画を実施したマグウェイ地域は同国中央部にあり、140万人以上が暮らしている。2015年当時、同地域のマグウェイ総合病院は施設・機材の老朽化が著しく、一部の診療科では病床占有率の100%超過に加え、手術室が2階にあるのに階段しか使えないなど不備が目立ち、改修・増築が急務であった。

上部躯体工事

当計画では、こうした状態の改善を目指して、同病院の敷地内に産科病棟、婦人科病棟、新生児ユニット、救急部門などを含む新棟を建設するとともに、必要な機材整備を行った。

リモートで行われた引渡式

乳幼児の死亡率が国内ワースト

産婦人科と新生児ユニットに注力したことには理由がある。ミャンマーは東南アジア諸国の中でも妊産婦死亡率が高いとされるが、2014年の国勢調査によると、マグウェイ地区の妊産婦死亡率は同国の全国平均を大きく上回っている。

また同じ調査では、同地区の5歳未満の乳幼児死亡率も最も高いと報告された。妊産婦と乳幼児は、リソースを惜しみなく注いで守る必要がある。同国政府もこれ以上は看過できなかった。

メインエントランス外観

そこで当計画では、合計で55床しかなかった産科・婦人科病棟を100床に増やし、2部屋しかなかった分娩室も4部屋に拡充。新生児ユニットでは、病床数を10から20(集中治療室4床を含む)に増やすとともに、産婦人科と一体的な管理ができるよう配慮された。これまでは新生児ユニットで病床稼働率が200%を超えることもあったが、産婦人科を含めて病床数がほぼ倍増するため、治療環境は大幅に改善し、妊産婦・乳幼児の死亡率の低減につながると期待されている。

検査・診療も即応の救急部門

マグウェイ総合病院には、ほかにも救急部門がないという問題があった。それまでは外来棟で救急患者を受け入れていたが、詳細な診察や検査は、外来棟と離れた画像診部門や検査室でないとできず、患者に負担をかける結果となっていた。そこで、部門間の連携を迅速化するため、新棟を画像診断部門と隣接させ、5床の救急処置室と、2室の診察室を含めた救急部門を新設した。

産科病棟

同病院には、交通事故にあって早急に脳内血栓を除去しないといけない患者や、ヘルニアの患者なども搬送されてくるが、そうした手術はできる限り清潔な環境で行う必要がある。当計画では手術室の清潔度を上げるとともに、それまで階段しかなかった2階の手術室への経路に、昇降機とスロープを設けている。

さらに、同病院は地元の医科大学の教育病院でもあるため、手術室にカメラを設置して、医学生が高度な手術の様子を見学できる仕組みを整えた。医療人材育成の点でも期待が高まっている。

昨年11月27日、新しい病棟の引き渡し式が行われた。新型コロナ禍でオンライン開催となったが、ミャンマーのミン・トゥエ保健・スポーツ大臣、アウン・モー・ニョ地域首相、田公和幸日本大使館参事官などが参加し、祝辞を述べた。

起工式 

コンサルティング:(株)山下設計ビンコーインターナショナル(株)
施設建設:佐藤工業(株)
機材調達:三菱商事(株)

『国際開発ジャーナル2021年1月号』掲載

(本内容は、取材当時の情報です)

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