経済をけん引する中小零細企業の育成を目指して
「人」を相手に仕事をする難しさと醍醐味
豊かな土壌と長い海外線を持つモザンビークはさまざまな農牧林産物の生産が可能で、本来豊かな国のはずである。しかし、一次産品はそのまま輸出され、食料品の多くが輸入依存の現状である。自国企業が自ら農産物に付加価値をつけ、経済をけん引することが期待されているが、それが可能
な企業が育っておらず、また産業振興を目指す国の体制も課題となっている。
そこで本案件では、同国の政府機関である中小企業振興機構(IPEME)を巻き込み、日本発の「一村一品」やカイゼン手法を取り入れながら、地域資源を活用した製品を提供する中小零細企業を支援することで、地場産業振興を目指している。
ただ、企業といっても日々の生活のために起業せざるを得ない家内工業が大半で、経費や売上の記録がなく、自社製品の強みやターゲット顧客を考えたことがない経営者も多い。そのため、経営改善や販路拡大支援をする以前に、事業の把握に時間がかかる。また、政府職員のモチベーションを上げるのに苦労することも多く、地場産業振興への道のりを考えると心が折れそうになる。それでも頑張れるのは、支援した経営者から、顧客が増えた、売上が上がった、店を大きくした、という嬉しい知らせを受け、小さくても確実に前に進んでいる状況を一緒に喜べるメンバーと一緒に仕事を進められているからである。
このような経営者や政府職員などの「人」を相手にする仕事は、短期間で大きな成果を出すことが難しい。しかし、こうした課題に取り組めることが政府開発援助の醍醐味だ。いつか、本案件の支援を受けた経営者が地域経済を引っ張る企業として活躍することに期待し、引き続き1社1社に対して地に足を付けた支援を続けていきたい。
プロジェクトギャラリー

販促やマーケティングを目的とする展示会への参加支援風景

展示会には融資先を求める金融機関も来場するため、PRの好機となる
プロジェクト担当者
株式会社コーエイリサーチ&コンサルティング
社会開発・平和構築部 大形 いずみさん(おおかた・いずみ、左下)
開発コンサルタントとして20年余り、アフリカ、中南米、アジア諸国にて農村開発、生計向上、人
材育成・組織強化などに従事。
経済開発部 下越 志延さん(しもこし・しのぶ、右下)
大学卒業後、海外協力隊員としてザンビアに派遣。その後アフリカを中心に中小企業やスタートアップの育成支援に関わる案件に従事。
※国際開発ジャーナル2025年8月号掲載