簡易堰(せき)と土水路、大きな未来
サブサハラ・アフリカに命を吹き込む 住民主体の灌漑開発 “ COBSI ”
サブサハラ・アフリカ地域は、広大な灌漑可能面積があるものの、予算の制約などから灌漑施設整備が進んでいない。こうした課題に対し、地域住民主体の小規模灌漑開発「COBSI(コブシ)(Community BasedSmallholder Irrigation)」が、新たな可能性を示している。マラウイで初めて導入されたCOBSIは、その後ザンビアで展開され、現在はモザンビークにおいてもプロジェクトが進行している。
COBSIでは、現地周辺にある資材(木、草、土など)を活用し、農家自らが取水堰や水路の建設・維持管理を行う。低コストで持続可能な上、地域住民の主体性を育む実践的なアプローチである。この取り組みを受け、国際協力機構(JICA)は2024~25年にかけて、サブサハラ・アフリカ全49カ国へのCOBSIの展開可能性について調査を実施している。現地調査において、コートジボワール、ガーナ、タンザニアおよびマダガスカルでは、COBSIのフィージビリティを検証する実証事業を行い、マラウイとザンビアではCOBSIの現状調査を行った。
私は若手コンサルタントとして、この調査に参画した。各国の多様な文化に触れ、異なる行政制度に適応しながら、先方政府関係者や現地の農家と協働して取水堰や水路の整備を行った。現地では、高度で複雑な技術に頼るのではなく、農家が受け入れやすい技術を、創意工夫をもって伝えることで、課題を一つ一つ乗り越えてきた。
現在、この調査は最終段階にあり、各国へのCOBSI展開の方法を検討している。COBSIは、アフリカの小規模農家へ自立と自信をもたらし、地域農業の発展に貢献する持続可能な選択肢となり得ることを、強く実感している。
プロジェクトギャラリー
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簡易堰建設のコンサルテーション(ガーナ)
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土水路を流れる灌漑用水(コートジボワール)
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簡易堰建設OJT(コートジボワール)
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現地の人々との対話(タンザニア)
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COBSI研修におけるプレゼンテーション(コートジボワール)
プロジェクト担当者
株式会社三祐コンサルタンツ
海外事業本部 ウディタ ダサナヤカさん
工学博士。スリランカを中心に灌漑・土木・給水プロジェクトに従事し、ローカル・ナレッジを活用した防災研究で博士号取得。GISおよびリモートセンシングの応用に関する経験も有する。
※国際開発ジャーナル2025年8月号掲載