感染症対策の先導役に
アフガニスタンは、20年以上続いた内戦により経済社会インフラが壊滅的な打撃を受け、多くの国民が貧困ライン以下の生活を余儀なくされている。
同国の死亡要因の1位は感染症で、中でも結核が最も大きな割合を占める。患者数は人口10万人に対して131人(世界保健機関2008年報告書)とされ、年6万人の患者が発生。死者も2万人に達すると推定されている。
しかし、同国には重症の呼吸器感染症の患者を隔離治療するための専門施設がない。1970年代に日本の無償資金協力によって建設された首都カブール・ダルラマン地区にある国立結核研究所・結核センターも外来患者のみ対応し、入院施設を有していない。重篤な呼吸器感染症の適切な診断・治療の要となる検査施設にも十分な設備・機材が設置されていない状況だ。
このため、アフガニスタン政府は08年6月、日本政府に対し、「三大感染症」である結核、マラリア、HIV/エイズを対象とした呼吸器感染症患者への集中、隔離治療が可能な感染症病院の新設と機材調達を要請。これを受けて実施されたのがこのプロジェクトだ。
12年3月に着工し、1年6カ月の工事を経て翌13年8月末に完成。大日本土木(株)工事部建築グループの佐藤実男工事所長は「治安面や資材調達などの苦労もあったが、安全面に十分配慮したこともあり、工期通りに完成できた」と話す。
現地の施工業者向けに安全研修を行ったり、優秀な作業員を表彰したりするなど安全対策を徹底し、作業員の意識向上に努めた。
(株)オリエンタルコンサルタンツGC事業本部建築開発部の江連晃尉プロジェクト部長も「日本の10年に渡るさまざまな支援を通じて、本邦技術者からサブコンである現地建設業者への技術移転が進んでいることを実感した」と語る。
施設は病棟部、外来部、中央診療部、管理部、サービス部、共用部の6つのブロックで構成され、延べ床面積は5,327.4平方メートル。病棟部は計80の病床数を有する。
今後は日本のほか、世界保健機関(WHO)、世界エイズ・結核・マラリア対策基金などによる対策支援との連携・協調を通じて、同国の医療施設の“先導役”としての貢献が期待される。
実施期間:2012年3月~13年8月
『国際開発ジャーナル2014年01月号』掲載
(本内容は、取材当時の情報です)
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