沿岸部及び内陸水域における救助能力強化計画<無償資金協力>
コンサルティング:(一財)日本造船技術センター
機材調達:丸紅プロテックス(株)
パドマ川(インド領内ではガンジス川)、メグナ川をはじめとして、多数の河川が集中するバングラデシュでは、小型船舶による水上交通が発達している。毎年のようにサイクロンが襲来するため洪水も多く、集落によっては船に頼らなければ避難もままならない。また、貨物船、土運船などの物流ルートとなっている河川も多いため、荷物の積みすぎや衝突を原因とする船舶の沈没、海難事故による油流出も頻繁に起こっている。そのため、沿岸部や河川部での人命救助や環境保護などの海上保安業務を担うバングラデシュ沿岸警備隊(BCG)の果たす役割は大きい。
だがBCGは2017年時点で、1988年に日本から供与された23隻の10m型救助艇しか所有していない。これらの救助艇も30年間使用され続けたことで劣化しており、事故現場への到着が遅れる事態が多発していた。
そうした中で本計画は、老朽化した23隻の代わりとなる最新の救助艇をBCGに供与し、船舶事故や洪水の現場へ迅速に駆けつけられるようにするものである。このうち丸紅プロテックス(株)は、主に細い河川や水路での救助活動に用いる10m型救助艇(帆布屋根つき)を20隻調達し、今年6月引き渡しを終えた。12月には追加要請のあったオーニング(帆布屋根)20隻分も供与する予定となっている。
これらはBCG管区本部基地と全国12カ所に配備され、BCGが所有する救助艇の能力が強化されることにより、収容可能な救助者数は計画実施前に比べて約2.2倍増、事故・災害現場への到着時間の大幅短縮が見込まれている。さらに流出した油の拡散を防ぐことで、河川および海洋の環境保全につながるとの期待も大きい。
『国際開発ジャーナル2021年10月号』掲載
(本内容は、取材当時の情報です)
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